大谷翔平に見る商売繁盛の基本7/8
企業家から日本を代表する事業家として成功した二デックス(旧日本電産)の創業者・永守重信氏は、ベンチャービジネスに挑戦する若き事業者に対してベンチャーキャピタルを用意し、5年間に35社に対して資本的に応援した結果、成功したのは1社しかなかったことに関して、「中小企業が生きていくには、人の2倍働けばいい。必ず、這い上がっていける。しかし、ハードワークを嫌がり、ちょっと順調だとすぐクルマだとか家だとかにお金を使ってしまう情けない人が多すぎる。どうしてたった10年間、ハードワークを続けられないのか」と。
この永守重信氏の話は30年前のものですが、起業を志す人間の志としては、今も変わらないはずです。しかし現在の日本は自己中心の思想が強くなり、かつIT社会になってきたこともあり、この永守氏の話に反発しても、それを自分の問題として受け止め、考え直す人は益々減ってきているように感じます。
そして政府も自治体も、こうした長時間労働を支持するような言動を危険視する傾向にあります。なぜなら現代は、『労働時間短縮・休日増加』の条件のもとに、生活をエンジョイする生き方を推奨する世の中になっているからです。今の時代、『五番町夕霧楼』や『蟹工船』ではあるまいに、労働契約に国が関与する心配はありません。そこには顧客満足の精神が、個人にも企業にも薄れてきていることが、背景としてあるように感じます。
つまりサラリーマンで生きることが最も理想的な生き方であり、労働基準法が適用されない事業主として、長時間労働に耐えながら、自らの志を実現することを良しとする生き方を尊ばない、いやむしろ否定する社会になってきていると言えるのではないでしょうか。
大谷は二刀流ですから、投手としての練習、打者としての練習と球場で過ごす時間が他の選手より多いことから、観客はそれだけ彼の姿を見る機会を多く持てるわけです。アメリカのプロ選手が驚かされるのは、大谷の細心の配慮の下で練習している光景だそうです。このことを同僚の一人は、次のように語っています。
「彼の練習態度は誰にも負けない。彼はやることにおいて、本当に細部まで行き届いているんだ。反復動作で1回1回の間隔をあれだけ長くとる人は見たことがない。彼はそれだけ集中しているんだ。ケージ内で素振りする時も、グランド上でスプリント練習するときでもね」。
「彼は文字通り、試合の状況を(頭の中で)創りだしているんだ。ケージで20本素振りする時は、彼の場合20分かかる。シチュエーションを思い描くために、1スイングに1分かけているんだ。見ていて本当に特別だよ。だから彼はあれだけ(の結果を残して)優れているんだと思う」。
大谷は、ほかの選手以上に、球場に居続け、良い条件反射を身につける練習を黙々と行っているのです。その姿に選手は勿論のこと、野球関係者も球場に詰めかけたファンも、一様に感銘を受けるのだと思います。ここで大切なことは、いい条件反射をつくることです。今日の大谷の振りの価値は、いい条件反射をつくることに努力してきた結果生まれていると、示唆しているように思えるのです。