第3047回

公正証書の保管期間はあるのでしょうか

ある財団の原始定款が、公証役場で保管されていないかと探してみました。公正証書というのは公文書で、公証人のいる公証役場で、一定の要件を満たして公証人が作るものです。

庶民に親しみのあるのが、公正証書遺言です。他に法人設立時の定款も、ここで作成されることになっています。そして、その原本は、ここで永久に保管されると私は信じていました。

ところが問い合わせてみると、財団法人や社団法人などの公益法人(最近は公益か一般かにわかれました)の定款は、保存されていないとの回答でした。では、株式会社などの法人の定款はどうなっているのですか」と質問すると、それでも保管期間は「10年です」と言われました。

また建物賃貸借契約公正証書など期限があるものはその間、「相続等に関する公正証書はどうなっているのですか」と質問すると、「相続は被相続人が105歳になったら処分しています」という返事でした。実務方の正直な回答です。

何だか自信なさそうだったので、調べてみました。公証人法施行規則27条1項1号によると20年と書かれているようにも読めます。

第27条 公証人は、書類及び帳簿を、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に掲げる期間保存しなければならない。ただし、履行につき確定期限のある債務又は存続期間の定めのある権利義務に関する法律行為につき作成した証書の原本については、その期限の到来又はその期間の満了の翌年から10年を経過したときは、この限りでない。

(1) 証書の原本、証書原簿、公証人の保存する私署証書及び定款、認証簿(第3号に掲げるものを除く。)、信託表示簿 20年

(2) 拒絶証書謄本綴込帳、抵当証券支払拒絶証明書謄本綴込帳、送達関係書類綴込帳 10年

(3) 私署証書(公証人の保存する私署証書を除く。)の認証のみにつき調製した認証簿、確定日付簿、第25条第2項の書類、計算簿 7年

この「20年」は、当該公正証書の成立した翌年の元旦午前0時から起算します。(公証人法施行規則27条2項)

これは、他人の物の取得時効の完成期間が(悪意又は有過失の場合で)が20年である事〔民法162条1項〕、債権又は所有権以外の財産権の消滅時効の完成期間が20年である事〔167条2項〕、債権消滅時効期間が10年である事〔民法167条1項〕から、これ以上の期間の保存は原則として必要ないとしたものでしょう。

もっとも、公証人法施行規則27条3項は、『第一項の書類は、保存期間の満了した後でも特別の事由により保存の必要があるときは、その事由のある間保存しなければならない。』 と定めています。

従って、相続回復請求権の除斥期間は相続開始から20年である事(民法884条後段)を考えれば、遺言公正証書に付いては、少なくとも当該遺言者が将来死亡してから20年間は、保存すべきである(しなければならない)と言えます。

そうすると、公証人には、過去に作成された遺言公正証書に付いて、各々いつ相続が発生したのかを把握出来ないし、現在のところは、事実上「永久保存」 して置くものとして、扱われています。

公証人が、当該相続が発生して20年を過ぎている事を何らかの理由で確認出来たら、その場合は、公証人が当該公正証書原本を破棄しても、公証人法施行規則27条3項には抵触しないと考えられます。

争いが増えている昨今、公証人役場も、捨てるに捨てられない、それでいて書庫のスペースは限られている。謄本請求の多い遺言書などは手前に置くとか、実務方では工夫が必要な公証人役場です。

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